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ハウルの動く城 2
前回に引き続き、「ハウルの動く城」から膨らんできたイメージを書いてみたいと思います。

1. ハウルの闇

ハウルは孤児の元型を持っています。彼の生い立ちについては、ほとんど触れられていませんが、少年時代の彼には深い孤独を感じます。その孤独感は、寂しさや悲しさというよりは、凍りついた魂として表現されるようなものです。彼は、少年時代に、温かな魂を失うのです。それは、彼が成長した後にも、希薄な関係性という形で、彼の生活を特徴づけています。

少年時代に十分な愛を受けて来なかったことが、彼の内なる影を作り出します。扉の先の世界を決める4つの色の内の一つは黒です。これは彼の内面の世界を表しているのではないかと思います。この世界だけは、ハウル以外の誰もが入ることが出来ないのです。この孤独な世界の中にまで入って来れる人は誰もいません。これが、ハウルの2面性です。表面的な美しく明るい彼のもう1面は、暗く孤独なのです。

夜になると、彼のもう一つの側面がうごめき出します。彼は、その孤独な内面と一人で向かい合わなければなりません。その中で、彼はエネルギーを吸い取られていくばかりなのです。

2. カルシファー

カルシファーはおおよそ悪魔らしからぬ悪魔です。実際のところ、カルシファーを悪魔だとする特徴は、なんらありません。ただ、本人がそう言っているだけです。

カルシファーは、失われたハウルのハート、凍り付いたハウルのハートと考えられるでしょう。あるいは、誰にも頼ることの出来ないハウルは、自分の力のみを頼りとして生きてきたその象徴かもしれません。デーモンの語源であるギリシャ語のダイモーンは、守護霊あるいは魂という意味です。

物語はハウルが、その失われたハートを取り戻す流れでもあります。その為には、彼の内側の闇、──そこは他人が入っていくことの出来ないところなのですが──に愛が届く必要があるのです。

扉の色で、黒だけはハウルのみが出入りしているでしょう。あれがハウルの内なる闇です。最後のところで、ソフィーが入っていくのは、この黒の扉です。彼女だけがハウルの内面と深くつながることが出来たのです。

ハウルが美しい女性の心臓を食べるという噂は、ハウルに心を奪われた女性たちが、結局は彼の内側の闇と関係を作ることが出来ずに、心傷ついたまま終わってしまうところから生まれたのではないでしょうか。ハウルのハートは凍り付いています。彼との温かな関係は、期待出来ないのです。彼がハートを取り戻すまでは。

3. ソフィー

人は誰しも、その内面にいろいろな元型を持っています。ソフィーの内面の元型の一つ老賢者が、90歳のおばあさんであると考えられます。

ソフィーはそのままだと、自分でも好きだかどうか分からない帽子屋の仕事を続けているだけに終わっていたかもしれません。しかし、必要なときに、彼女の内面の老賢者が彼女を導き始めるのです。

90歳のソフィーによって、彼女は冒険を始め、彼女の人生を歩み始めるのです。90歳のソフィーが全ての物語に彼女を誘います。また、その智慧が、いろいろな場面で彼女を助けるのです。

ハウルが彼の魂を取り戻すことが、一つの流れであるのならば、ソフィーが内面にある智慧を統合することがもう一つの流れです。

最後の場面で、ソフィーの髪の毛の色は銀色のまま残っているでしょう。あれは、ソフィーがその智慧を自分自身に統合できた象徴と考えられます。内なる智慧を統合する為には、その声に従って歩み始めることが大切なのです。

4. ハウルのヒーリング

ヒーリングを必要としている部分は、いつも無意識の中に存在しています。だから、アドバイスや助言など、その人の表面的な部分に何かをしようとしてもそれは力を持ちません。

もっと深く、その人の存在にまで届くときに、それは力を持ち始めるのです。ソフィーの行なった素晴らしい仕事は、ハウルの少年時代──ハウルの無意識の世界──と関係を持つことが出来たということです。この仕事には、彼女の中の老賢者の力が必要だったと思います。男女間の愛より深い「コンパッション」こそが、それを可能にするのです。

ソフィーは、ハウルの内面の世界に入っていることが出来ました。今まで彼がたった一人きりだった世界に、彼女は入っていくことが出来たのです。彼の孤独が解け始めるのです。

ソフィーがハウルの心臓を戻す場面は、それら全ての象徴です。実際には彼女のやってきた全てのことは、凍り付いていたハウルの心臓を溶かすことでした。

また、そのプロセスの中で、ソフィーも自分の中にある智慧を、自らのものとして統合していくことが出来たのです。
by yoji_iwata | 2005-01-15 15:07
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